イヌ派かネコ派かと聞かれたら、私は迷わず「イヌ派」と答える。
そしてイヌ派のなかでも、断然、「パグ派」である。
というのも、昔実家で飼っていたのがパグだったのだ。
パグを一度でも飼ったら、ほかのイヌを飼いたいと思わないのではないか。
それほどパグは愛嬌があり、性格が良く、愛らしい。
ま、「食いしん坊がたまにキズ」と図鑑に書いてあったが。
たまに近所の公園などで見かけると、私は飼い主をよそ目に「うわぁ~」と近づいて、あわよくばじゃれ合おうとしてしまう。
カイロプラクティックの修業時代を過ごした逗子市には、パグばかり扱っている店があった。
カランとドアを鳴らして入ると、室内の広場(?)に放し飼いにされた十数匹のパグたちがいっせいに「フガフガフガ」と鼻を鳴らして駆けずり回る。
パグ好きの人間が分かるに違いなく、歓迎の意を示してくれているのだ。
あの店はまだあるかなぁ。
いや、こんな話が書きたいわけではなかった。
「飼い主とイヌは似るよね」、という話がしたかっただけだ。
これ、よく言われることだが、ほんとうにそう思う。
特にイヌはそうだ。
飼い主がイヌに似るのか、イヌが飼い主に似るのか。
どう考えても前者だろう。
昔、近所にパグを連れて歩く70代くらいのお母様がおられた。(まだパグの話)
そのお母様が、まったくもって“パグ顔”だった。
具体的にどこがどうと説明する必要もないだろう。
そのパグちゃんの顔をお面にして被ったようだった。(言い過ぎか)
最近も、パグを連れておられる中年のお父さんをたまに見る。
これまた見事な“パグ顔”だ!
背は高いのに。(関係ないか)
事程左様に、飼い主はイヌに似てくるものなのだ。
さて、ここからが本題だ。(やっとこさ!)
「ミラーニューロン」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
90年代にイタリアの学者が発見した脳細胞で、10年くらい前には脳科学ブームに一役買った。
要は、他者の行為を鏡のように映して真似るだけでなく、その行為を見ているだけにもかかわらず、まるで自分が行っているかのように興奮する神経細胞だ。
しかも、その行為の意図までも理解するという。
以前、ヤクザ映画を観た。
映画館から出るときには、肩をいからせ、すれ違いざま人をぶん殴ろうとする衝動を感じて、われながら怖い思いをした。
大好きなダニエル・クレイグの「007」を観た帰りは、ほんとうに危なかった。
気分は一人カーチェイスだ。
立体駐車場をキュキュキュ―ッと駆け下り、信号待ちでは隣に並んだ車の運転手を「怪しいやつ」と睨みつけ、ふつう15分かかる道のりを5分で帰って来た。
人は(少なくとも私は)、簡単に影響される。
これも「ミラーニューロン」の仕業と言えるだろう。
好きな人や尊敬する人と時間を共にすれば、いつの間にかその立ち居振る舞いまでうつってくる。
逆もまた然り。
悪い人たちと共にいれば、悪い影響を受ける。
朱に交われば赤くなる、だ。
とどのつまり、『良い姿勢になりたければ、良い姿勢の人を見ましょう』、と言いたいのだ。
私が、「ラジオ体操は、テレビのお姉さんをよく見てするといいですよ」と言うのもそういうこと。
見るだけでうつってくるから。
患者さんによくおすすめするのは、バレエの公演(教室の発表会など)を観ることだ。
会場を出るときには、きっといつもよりスッとした姿勢で歩いていることだろう。
宝塚歌劇のDVDも良いと思う。
街に出たら、姿勢のいい人を探してみよう。(なかなかいないが)
姿勢がいいだけで、その人は明るく見え、目立つはずだ。
「ミラーニューロン」は、ふだん意識していないが、私たちに大きな影響を及ぼしている。
なんせ“パグ顔”にまでなってしまうのだから。(この真偽は一考すべきだが)
ちょっとおかしな文章になってしまったが、最後までお読みいただきありがとうございました。
ちなみに私は、パグの物真似がめちゃくちゃ得意だ。
おすすめ図書『ミラーニューロンの発見-「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学』(マルコ・イアコボーニ著/ハヤカワノンフィクション文庫)
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