歩く話

はじめて来院された方には、最初に室内を歩いてもらう。
5m程度を二往復、「スタスタ歩いてみてください」と。(「スタスタ」と入れるのがポイントで、ただ「歩いてください」とガン見したら、緊張してぎこちなくなってしまう)

時間にして20秒にもならないが、得る情報は多い。

  • リズム
  • 足音
  • 横揺れ・縦揺れ
  • 前後左右の傾き
  • 腕の振り
  • 目線
  • つま先・膝の向き
  • 歩幅
  • 全体の連動性

など。

よく見られる歩きは、次のようなものだ。

  • リズムが左右で異なる(ズートン・ズートンのリズム)
  • 足音が大きい(ドタンドタン)
  • 上体が左右どちらかに傾く
  • 上体が左右どちらかに捻じれている
  • 腕をほとんど振らない(または片側だけ止まっている)
  • 前のめりになっている
  • 膝やつま先が開いている
  • 目線が下(猫背気味)
  • 歩幅が小さい(ペタペタと歩く)

中でも腕がほぼ動いていない人が多いのだが、指摘してはじめて「あら!」と驚かれる。
たとえば右腕がまったく動いていないひとの場合、右肩をはじめ右側に何か問題があると推測する。(もちろん一概にはいえない)

からだが捻じれる場合は、たいてい「股関節」に原因がある。
股関節の可動性が左右で異なるため、おへそが11時か1時かどちらかの方向に向くのだ。(「骨盤の歪み」と言ったほうがウケはいいかもしれない)
結果的に、胸椎や頸椎で補うので、背中や首にも捻じれが生じる。

さらには、なんとなくではあるが、性格的なものもつかめる。

たとえば足音が大きいひとは前のめりに歩き、どこかせっかちなところがありそうだ。
運動なども、ついやり過ぎて故障するタイプで、力を抜くのが苦手だ。
こういうひとは、施術中、腕や足をこちらが他動的に動かそうとすると、わざわざ自分から動かしてくれたりする。(そうされないほうが、ありがたい)
ついでに言うと、前のめりに歩くと足首を酷使するのでふくらはぎを傷めやすい。
そして残念ながら、ガンガン歩いているわりには足が出ないため効率が悪く、疲れやすい。

小さい歩幅で遠慮がちにペタペタと歩くひとは、やはりおとなしい感じのひとが多い。
精神的なストレスを抱えていることも考えられ、その場合は施術もやわらかめに調整する。(問診での受け答えなど総合的に判断する)

靴をぶかぶかに履き、膝を開いて投げ出すような歩きをするひとは(中年以上の男性に多い)、「面倒くさい」が口癖になっているかのように見える。

このように、歩きはそのひとのからだの癖や性格まで表している。

まずはそこに気づいて、できるだけきれいで効率の良い歩きに変え、からだの癖や負担を改善していきたい。
性格まで変えるつもりはさらさら無いが、歩きが変わるだけで、表情が明るくなり、歩くことそのものが楽しくなってくるのは間違いない。

実際、施術でからだをほぐした後、いくつかのポイントを指摘して歩く練習をすると、みなさん見違えるほど生き生きした美しい歩きに変わってくる。

歩きは、深い。
だから、楽しい。

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