踵着地はいったん忘れよう

「踵から着地するのが大事なんですよね?」

ウォーキングの指導をしていると、皆さんからよく出てくるのがこの言葉。健康番組などで、「踵から着地しましょう」と強調されますからね。

「それは、いったん忘れてください」

と、私はお答えしています。

「踵着地」を意識しすぎると、足に力みが入って、無理のある歩き方になってしまうからです。ただ、“いったん忘れる”のであって、完全に間違いだとは言っていません。

「踵着地」がいけないのではなく、「踵着地」を意識し過ぎることがいけないのです。

なぜ「踵着地」が強調されるのだろう?

そもそもなぜ「踵着地」が強調されるのでしょうか。

人間の正常歩行では、たしかに踵から着地してつま先から離れていきます。ところが、股関節や膝関節などに痛みのある人の場合、痛みを避けるためにつま先(または前足部)から着地することがあります。

そういう人に向けて、正しい歩行に直そうということで「踵着地」が強調される一面があります。

意識し過ぎるとどうなる?

「踵着地」を意識し過ぎるとどうなるでしょう。

実際にやってみてもらうと、たいていの人は、つま先を大きく上げながら踵を下ろしていきます。足首は強い背屈状態にあり、背屈の主動筋である「前脛骨筋」が硬く緊張してしまいます。

股関節痛の人で、しばしば「スネが痛む」とか「スネがつる」と訴える人があるのは、この歩き方も関係していると思われます。

(写真1)踵着地を意識し過ぎると、つま先が大きく上がり、
「前脛骨筋」が緊張する。

ほぼフラット着地でOK

正常歩行では踵から着地しているとはいえ、つま先を大きく上げているわけではありません。歩幅にもよりますが、足底は「ほぼフラット」な角度で着地すればOKです。私は、「ほぼフラット」での着地をおすすめしています。それでも一瞬踵が早く着く、その「踵着地」で十分です。(写真2)

(写真2)「ほぼフラット」着地でも一瞬踵が早く着地する。

「踵着地」を意識し過ぎるさらなる弊害

「踵着地」を意識し過ぎる弊害は、前脛骨筋が緊張するだけではありません。

  • 踵、足首、膝、股関節などへの衝撃が大きい
  • 一歩ごとにブレーキがかかり効率が悪い

といったことも見逃せません。

要するに、踵からガツンガツンと地面と喧嘩するように歩いてしまうのです。足音は大きくなり、踵や膝、股関節への衝撃は大変なものです。靴も踵が早くダメになるでしょう。

先日も、「踵着地」を実践していた方に「フラット着地」で歩いてみてもらったら、

「あら、前に進む感じがある!」

と喜ばれました。それはそうでしょう。ブレーキをかけながら歩いていたところを、ブレーキを外したわけですから。

足首から余計な力が抜けると、足の骨格はロッキングチェアのように滑らかに回り、スムーズな重心移動を助けてくれます。

良かれと思ってやっていたのに実は逆効果だったということは、健康に関する事ではよくあることです。その代表的な一つが、この「踵から着地」だと思いましたので、解説してみました。

なお、「脱力ウォーク」に関する一連の記事も、ぜひ参考にしてみてください。