私が提唱する「脱力ウォーク」は、歩くときにできるだけ足首の力を抜く歩き方です。どのくらい力を抜くかというと、足首がぶらんぶらんになるくらいの感覚です。皆さんにやってもらうときは、立ったまま足首ぶらぶら振ってから、その感覚を維持して歩いてもらいます。
ただし、姿勢まで崩してダラダラ歩くわけではありません。あくまでもスッとした良い姿勢をとりながら、膝から下を脱力します。
このとき荷重はどうなっているかというと、「母趾球に乗っていく」感覚です。
重心移動を伴いながら、足裏の親指のつけ根辺り、「母趾球」に乗っていきます。多くの人は小指側に体重が逃げていくため、やってもらうと案外難しく感じるようです。
このとき大事なのは、間違っても母趾球で蹴らないこと。
ウォーキングの本などを見ると、しばしば「母趾球でしっかり蹴り出す」と書いてあります。
そうではなく、「母趾球に乗る」だけで十分です。
「乗る」と「蹴る」では大違い
「母趾球に乗る」と「母趾球で蹴る」は、似ていますが正反対といっていいほどまったく異なります。
整理してみましょう。
母趾球に乗る
- おもな動力は重心移動
- 母趾球に乗って、最後は蹴らずにスッと離れる
- 足首は終始リラックス
- 疲れにくく、故障しにくい
母趾球で蹴る
- おもな動力は足首の筋力
- 最後は一生懸命後ろに蹴り出す
- 足首は力んで緊張
- 疲れやすく、故障につながる
まるでワンちゃんが用足しのあと後ろ足で砂を蹴るような、そんな歩き方をしていませんか?(笑)
母趾球を意識することは間違いではないのですが、そこで「蹴る」となると黄信号です。足裏や足首、膝に痛みが出る可能性が高まります。足がつるこむら返りも起きやすくなるでしょう。
歩いて実験
実際に両方の歩き方をやってみるとよくわかります。
「蹴る」歩きをすると、足首周りの筋肉が硬く緊張します。
「乗る」歩きでは、スッと足が離れていくので、力みはありません。
前者は筋肉が硬化し、後者は逆にストレッチされるような感覚です。
そして、もう一つ、大切なこと。
それは、蹴ったからといって早く歩けるわけではない、ということです。
母趾球に乗る歩き、つまり「脱力ウォーク」でも、十分に早く歩くことができます。
1.まずガンガンに蹴って高速で歩きます 2.同じ速度を保ちながら乗る歩き「脱力ウォーク」に切り替えますきっと同じスピードで歩けます。ただ、身体の使い方がまったく変わります。このときの脱力ウォークでの身体の使い方をマスターすると良いということですね。
いかがでしたか?「乗る」と「蹴る」はまったく違うことがご理解いただけると思います。次に歩くときは、ぜひ母趾球にノリノリで歩いてくださいね。
※これはウォーキングに限らず、ランニングにおいても同じことがいえます。負荷が大きいぶん、どちらの走りをするかで故障のリスクが大きく変わります。スポーツをされていて故障にお悩みの方は、遠慮なくご相談ください。
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