変形性股関節症の人にエアロバイクをおすすめする理由(注意点も含めて)

「股関節が悪い人に、エアロバイクってどうなん?」

と、変形性股関節症をもつSさん(50代男性)から聞かれました。

エアロバイクは、室内でできる「自転車漕ぎ」の器具ですね。

ネットで調べると賛否両論あるので、(どうなんだろう?)と思われたのです。

私の答えは、

「良いと思います」

ただ、注意点もありますので、今回はそのへんも含めて書いてみます。

変形性股関節症におけるエアロバイクの効果

ここでは特に「変形性股関節症」の人にエアロバイクでどんな効果が期待できるかという視点から、次の2点を挙げます。

  1. 軟骨を元気に保つのに役立つ
  2. 良い運動になる

軟骨を元気に保つのに役立つ

変形が進むほど、関節の可動域は狭まります。

動きが悪くなるわけです。

すると何がいけないのかというと、関節内の「関節液」の循環が悪くなるのです。

関節液には、次の二つの重要な役割があります。

【1.潤滑剤】

関節液は「滑液」ともいわれ、文字どおり潤滑剤です。関節液の循環が悪くなると、潤滑剤が少なくなるわけですから、関節の動きがさらに悪化し、軟骨を傷めやすくなります。

【2.栄養剤】

軟骨には血管が無く、栄養を血液ではなく関節液から得ています。関節液の循環が悪くなると、栄養を十分に得ることができず、傷めやすくなります。

まとめてみましょう。

関節の動きが悪くなる
    ↓
関節液の循環が悪くなる
    ↓
軟骨の潤滑が悪くなり、栄養補給も乏しくなる
    ↓
軟骨が傷みやすくなる

「関節液」は、関節を動かすことで関節内に浸出して循環する仕組みになっています。

したがって、軟骨を元気に保つには、「関節を動かす」ことが大切です。

できる範囲でいいので、関節をしっかり動かして関節液の循環を促し、軟骨を元気に保ってあげましょう。

もりた院長
もりた院長

「貧乏ゆすり(ジグリング)が良い」と言われるのも関節を動かすからです

良い運動になる

エアロバイクを漕ぐことは、良い運動にもなります。

股関節痛があると、どうしても外出が少なくなり、日常生活での運動量が落ちます。

同時に、気分も落ち込みます。

エアロバイクを漕いで脚を動かすことで、

  • 全身の血流が良くなる
  • ストレス解消になる
  • 心肺機能の強化にもなる

といった効果が期待できます。

Sさんは、「エアロバイクをはじめたら、階段で息が上がらなくなった」と言います。

注意点

次に、注意点について2点挙げておきます。

  1. 負荷をかけすぎない
  2. サドルを高めに設定する

負荷をかけすぎない

変形性股関節症の人にとってエアロバイクの一番の利点は、

負荷をかけずに関節を動かせること

だと、私は考えています。

先ほどから、「動かす」ことが大切と言っていますが、「鍛える」とは言っていません。

「動かす」ことと「鍛える」ことを、区別してほしいのです。

「鍛える」には、負荷をかける必要があります。

しかし、それは痛みのある人にはきつすぎます。

「鍛えよう」としなくていいので、「動かしておく」くらいの感覚で行うことをおすすめします。

これはエアロバイクに限らず、ほかのどんな運動でも同じです。

エアロバイクは、負荷の設定ができますから、負荷をもの足りないくらいに設定してください。

それでも上に述べたような効果は、十分に期待できます。

負荷をかけすぎて痛みが悪化することだけは避けたいところです。

もりた院長
もりた院長

「もの足りない程度」にしておくのは、痛みがある人が運動する際のポイントです

サドルを高めに設定する

変形性股関節症の場合、股関節の可動域が狭くなっていて、十分に曲げる(屈曲)ことができない人が少なくありません。

サドルが低めだと「屈曲」が深くなって難しいので、サドルを高めに設定し、脚を回しやすくするとよいでしょう。

ただし、乗り降りの際などの「転落」にだけは十分気をつけてください。

おすすめは「椅子に座って使用するタイプ」

ただ、変形性股関節症の場合、乗り降りも難しい、怖い、といった方も多いことでしょう。

そのような方には、「イスに座ってこぐタイプ」がおすすめです。

イスに座って使うエアロバイク
転倒の心配がない座って使う「エアロバイク」

↑こちらは、私が80歳の父にプレゼントしたものですが、とても良いと感じました。

イスに座って使う以外にも、仰向けに寝転がっても利用できます。(詳しくは、写真や動画をご覧ください)

これなら転倒の心配もいりませんし、股関節を深く曲げることもありません。


以上が、私が変形性股関節症の人にエアロバイクをおすすめする理由です。

ただし、どんな運動でも、やることがストレスになってはいけません。

あまり義務的に考えて堅苦しくならず、楽しんで、無理のない範囲で行なってくださいね。

参考になれば、嬉しいです。


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コメント

  1. ユウスケ より:

    先生の脱力ウォークの記事を読み実践していると、足腰がとてもらくになり、肩や肩甲骨も緩んで体調がよくなりました。ありがとうございます!
    長年の悩みがウソのようです。
    そこで質問なのですが、あぐらをかくと、左足にだけ力みがあるのに気がつき、負荷がかかっているのに気がつきました。
    立っているときも、左足が力んでいるような気がします。
    体のバランスなのか、変形性股関節症なのかどうかは分からないのですが、脱力ウォークのように、力みを緩めるよい方法はありませんか?
    教えていただけると幸いです。
    よろしくお願いします。

    • 森田忠志 より:

      ユウスケ様
      コメントをいただき、ありがとうございます。脱力ウォークを実践し、からだが楽になっているとのこと、大変嬉しく思います。大いに励まされました。

      【左足の力みの件について】
      見ていないので何とも言えないのですが、もしかすると上半身に「歪み・捻れ」があるかもしれません。
      重心のバランスがうまくとれないために、立位でも座位でも、左足が力んでしまうということはあり得ると考えます。

      そのような「歪み・捻れ」には、ひねり運動が効果的です。
      https://morita-chiropractic.net/2020/12/10/post-8266/
      https://morita-chiropractic.net/2023/04/02/hinerist/
      などを参考にしてみてください。

      また、足の脱力ということでいえば、立って足をぶらぶら振るだけでも効果はあります。
      https://morita-chiropractic.net/2021/12/29/ugokasiteiinoka/

      骨格を解剖学的に正しくとらえるだけでも、力みは抜けやすくなります。
      https://morita-chiropractic.net/2020/07/07/post-7235/

      以上、足りませんが取り急ぎ回答とさせていただきます。
      参考になれば幸いです。

      • ユウスケ より:

        とても丁寧に教えていただきありがとうございます。とても嬉しいです。
        早速ひねりストレッチや足ブラブラをやってみました。
        今までにない感覚で、詰まっていたこりがほんの少し緩む感覚や、呼吸がしやすくなる感じを受けていて、変化が実感できています。
        続けてやってみようと思います。
        また分からないことがあれば、お尋ねさせてください。
        ありがとうございました!

        • 森田忠志 より:

          ユウスケ様

          さっそく実践していただきありがとうございます。
          ユウスケ様は、身体の感覚がとても良さそうですね。
          ぜひ、継続してみてください。

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