「変形性股関節症」は、股関節の軟骨がすり減って関節のすき間がなくなり、痛みを生じたり、歩行困難をきたしたりする症状です。
9割が女性といわれますが、Sさんは男性(60歳)。
長年、もりたカイロをご利用くださっています。
20代で「変形性股関節症」の診断を受け、これまで手術は受けずにこられました。
今回は、Sさんの股関節にお屋根の役割をする骨が新しくできてきた、というお話です。
股関節の構造
股関節は、骨盤(腸骨)の臼蓋というくぼみに、大腿骨頭がポコンとはまった形状をしています。
(詳しくは、「股関節は骨盤にある関節です【正しくイメージしよう】」をご覧ください)
変形性股関節症を発症するひとは、「臼蓋形成不全」といって、もともと臼蓋のくぼみが浅いことが多く、「お屋根のかぶりが浅い」などとよく言われます。
Sさんの場合
Sさんも、そのひとり。
ただしSさんの場合は「浅い」というよりも、くぼみがほとんど認められず、左の股関節がやや上方に亜脱臼気味になっています。
したがって、ベッドに寝たときの脚長差も約3センチとかなり大きい。
股関節痛のほか、大腿部から下腿部にかけての張りがおもな症状です。
10年以上かけて新しい骨ができてきた
つぎの写真をご覧ください。
(※Sさんには写真掲載の許可をいただいております)
左股関節を正面からレントゲン撮影したものです。
写真左が2011年で、右は「それより数年前」(Sさん)。
わかりにくいと思うので、模式図にしてみましょう。
もともとほとんど認められなかった「お屋根の骨」が、2011年には少しずつできていることがわかります(赤い部分)。
この時点では、お医者さんの話では、「骨がつながって屋根がしっかりしてきたら、痛みも和らいでくるかもしれない」ということでした。
そして、つぎの写真がそこから11年たった今年(2022年)のものです。
お屋根の骨が大腿骨頭をおおうように、しっかりつながってきたことがわかります(赤矢印)。
こころなしか腸骨の“受け”も、しっかりしてきたようにみえますね(黄矢印)。
現在、股関節の痛みは「まずまず」ということです。
よく動かすことが大事
このような事例があることは私も知っていましたが、実際にそういう方をみたのはSさんがはじめてです。
人間のからだって、すごいですね。
足りない部分を補おうとして、骨ができてくるんですから。
Sさんは、歩くことの多い仕事に従事しておられます。
つらいには違いありませんが、逆にそれが良かったともいえます。
つねに一定の負荷がかかり続けることで、からだがそれに対応したわけです。
このような“お屋根”は、足のほうから見上げるようにレントゲンを撮ると、「帽子のひさし」のように広がりを持っているといわれます。
ほんとうに、すごいことだと思います。
なお、Sさんは、お仕事で歩くほかに、自宅ではおもにジグリングのマシンと、エアロバイクに取り組んでおられます。
ジグリングとは、いわゆる貧乏ゆすりです。
“よく動かす”ことが大事であることがわかりますね。
関心のある方には、つぎの本をおすすめします。
エアロバイクについては、「変形性股関節症の人にエアロバイクをおすすめする理由」もあわせてお読みください。
以上、変形性股関節症の方ではこのような事例もありますよ、というお話でした。
Sさん、ご協力ありがとうございました。
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