大谷武一は『正常歩』のなかで、歩き方の指導においては「さっさ」というかけ声を使うよう述べています。人間は不思議なもので、かけ声をかけられると、それに応じて身体が動きます。かけ声の効能について考えてみます。
『正常歩』にみる歩き方の指導
前回ご紹介した大谷武一著『正常歩』には、「歩き方の指導」について次のような記載があります。(赤太字は私)
それからいよいよ歩き方の指導に移るわけであるが、この際注意を要する点は、歩かせる前に歩行技術について、決して細部にわたる注意を与えてはいけないということである。ただ「力を抜いて、さっさと歩け」と命ずる。「さっさ」「さっさ」と歩くべきことのみを強調する。指導者は「一・二」とか「左・右」とかを呼ぶ代りに「さっさ」「さっさ」と連呼する。これは歩行者に、正しく歩くために必要な気構を作らせるためである。「さっさ」は「颯々」に通じ、正常歩の気分を最もよく表現せる言葉である。
『正常歩』38-39頁
膝がどう、着地がどう、などと細かいことを言うと、そこばかりに意識がいって、歩きがかえってぎこちないものになってしまいます。
そこで、指導する側は「さっさ」「さっさ」とだけ連呼せよ、ということです。
つづけて、こう述べています。
歩く者に「さっさ」「さっさ」の気分さえできれば、歩く動作もそれにしたがって正しく表現されることになる。「さっさ」というのであるから、その気分は自然に歩幅の上にも表れ、歩長は自ら伸びてくる。また「さっさ」というのであるから、歩数もそれにしたがって増してくる。「さっさ」という気分が、徐歩となって表現される如きことは絶対にない。肘の振り方も、歩幅と歩数に伴って、それと調和して振られることになる。
『正常歩』39頁
たしかに「さっさ」の気分で歩けば、歩幅や歩数が小さい「徐歩」に向かうことはないでしょう。
そして、「歩長は自ら伸びてくる」、ここが重要なポイントです。
「歩長」、つまり「歩幅」が勝手に伸びるのであって「伸ばそうとする」のではないということです。
しかし、昨今の歩き方の本などを見ると、しばしば「歩幅を広めにとる」ことがすすめられています。
仮にそのとおりに歩いたとしても、そこにはやはり力みが入ってしまい、自然な歩行から離れてしまいます。
歩幅は広げるのではなく、広がるもの。
その手段として、大谷先生がいう「さっさ」の気分で歩くのは、とても有効だと思います。
脱力ウォークの合言葉は「ヘナヘナスッス」
私の提唱する脱力ウォークにも、かけ声のような合言葉があります。
それは、
「ヘナヘナスッス」
です。
「ヘナヘナ」は脱力、「スッス」は「さっさ」にも通ずる颯爽とした感じを表します。
「ヘナヘナ」だけだと、ただの「ダラダラ」になりかねません。
そこで、「スッス」と調子良く進むイメージをもつことで、力みなく、それでいて軽快な歩きが生まれます。
つぎに外を歩くときは、「ヘナヘナスッス」「ヘナヘナスッス」、あるいは「さっさ」「さっさ」と、自分のなかでかけ声をかけながら歩いてみましょう。
きっと気持ち良い歩きができますよ。
日常でも使えるかけ声
蛇足ですが、大谷先生の本から刺激を受けて、日常のいろいろな作業時でも自分にかけ声をかけてみました。
何か作業するごとに、「イチ・ニ」「イチ・ニ」と声に出すのです。
すると、かけ声なしだと何となくダラダラしがちなところが、かけ声を出すことで、パッパと身体が動きます。
これは日常生活でもとても有効な方法じゃないかと、気に入っているところです。
みなさんも、よかったらお試しください。
まとめ
- 歩くときは細かいことを気にし過ぎず「さっさ」「さっさ」の気分で歩こう
- 脱力ウォークでは「ヘナヘナスッス」が合言葉
- 日常生活でもかけ声をかけるとはかどる
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