「体幹」と「末端」の役割を理解しておくと、身体をむだな故障から守ることができます。その役割とは、「体幹」は動力源、「末端」は微調整・伝力媒体というものです。故障の多くは「末端」を動力源にしてしまうことから生じます。これは「脱力ウォーク」においても核となる大切なポイントです。
本シリーズ15回目で「力みは故障の母」ということについて書きました。
今回は、その点についてもう少し掘り下げて考えます。
「脱力ウォーク」を考えるうえで“核”といえるほど、重要なポイントです。
「体幹」と「末端」
まず身体を大ざっぱに、「体幹」と「末端」に分けます。
一般に胴体とよばれる身体の中心に近いあたりを「体幹」とします。
そして、手や足といった先端のあたりを「末端」としましょう。
身体の使い方を考えるうえでは、この「体幹」と「末端」のそれぞれの役割をふまえておくことがとても大切です。
その役割とは、体幹は「動力源」、末端は「微調整&伝力媒体」です。
- 体幹・・・動力源
- 末端・・・微調整&伝力媒体
故障の多くは、この役割を取り違えて、
「末端」を動力源にしてしまう
ところから生じます。
「体幹」は動力源
「体幹」にある筋肉と、「末端」にある筋肉を比べたら、「体幹」の筋肉のほうが大きいということはイメージできると思います。
胸や背中、お尻や太ももなどの筋肉です。
それらに比べると、「末端」の筋肉、たとえば手首や足首、指(趾)を動かす筋肉は小さいですよね。
ここで重要なポイント!
つまり、「末端」の小さな筋肉よりも、「体幹」の大きな筋肉のほうが筋力が大きいということです。
したがって、身体を動かすときには、「体幹」の大きな筋肉を動力源にするのがより効率的といえます。
5キロの米袋は、大人ならひょいと持てますが、3歳の子どもには難しいですよね
「末端」は微調整・伝力媒体
これに対し、「末端」の役割は微調整&伝力媒体。
サッカーで考えてみましょう。
ボールを蹴るときに、「体幹」から伝わってきた力を使って脚を振り抜きます。
その際、実際にボールに触れてその力を伝えるのは「末端」の足ですよね。
これが伝力媒体という意味です。
そして、ボールの方向を決めるのは足の角度。
これが微調整です。(実際には股関節や身体全体の向きなども当然関係しますが、ここでは簡略的に考えます)
ポイントは、「末端」の役割はあくまで微調整&伝力媒体であって動力源ではない、という点です。
「末端」を動力源にするのが故障のもと
ところが、特にスポーツの世界でよく見られることですが、
「末端」の小さな筋肉を動力源として使ってしまう
ことがよくあります。
これが多くの場合、故障につながります。
足首の力をめいっぱい使ってボールを蹴っていたら、故障するのは時間の問題です。
ほかにも、
- 陸上選手がやたらと地面をつま先で蹴る
- 野球の投手が手首や指先に力を込めて投げる
- ゴルファーがグリップに力を込めて振る
- テニスの選手が手首の力だけで打つ
といったことをしていれば、やはり故障しやすいですし、そもそも効率的ではないので良いパフォーマンスにもつながらないでしょう。
蛇足ですが、野球で中高生がスライダーを多投すると故障しやすいと、よくいいます。リリース時に指先にキュッと力を入れる投げ方が、故障につながると思われます。読売巨人軍の桑田真澄さんは、最初に覚える変化球としてチェンジアップをすすめています。たしかに、掌で包むようにして投げるチェンジアップだと指先を力ませないので故障しにくいと言えますね。
蹴らない歩き・脱力ウォーク
「体幹」は動力源、「末端」は微調整&伝力媒体という基本は、もちろんスポーツに限ったことではありません。
「歩く」ことにおいても同じです。
私が「蹴らない歩き・脱力ウォーク」をしつこく提唱しているのも、そのためです。
地面をつま先でグイグイと蹴って歩くのは、身体の構造上、理に合わないということです。
その理に合わない歩き方をすることで、多くの人が、足首や足裏、膝などに痛みを抱えてしまっています。
それをなんとかして、くつがえしたいのです。
まとめ
- 「体幹」は動力源、「末端」は微調整&伝力媒体が本来の役割
- 「末端」を動力源にしてしまうことが故障の原因
- これが「脱力ウォーク」の核となる考え方
次回は、先日動物園で観察したチーターについて書いてみたいと思います。
【追記】こちらに書きましたのでご覧ください↓
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